【熊本・川辺川】パックラフトで下るクラシックルート。川辺川ダムと人吉・球磨の復興について考える夏。

旅の記録

こんにちは。
ついに行ってきました。

熊本県の清流「川辺川」ですよ!!

そして、
スマホを水没させてしまい、
しばらく連絡が取れず
大変ご迷惑をおかけしました。

ラヴィット
ラヴィット

。。。


今回の川辺川で、初めての「沈」を経験
椎名誠さんがカヌーで初めて沈したのも川辺川だそうで。
ええ。
やっと一人前になれた気がします。笑

しかし、激流に弾き飛ばされただけではなく、そのあとスマホを三脚もろとも水没させてしまうという大失態。(回収できず)
これは沈というよりは撃沈…
いや、大撃沈という様相でございます。



とは言え、
川辺川はこの上なく美しかったし、川辺川そして球磨川を取り巻く状況と、川を愛しそして共に暮らす皆さんの姿に、深く心を打たれたのも事実。

とても濃密な旅となりました。
よろしければお付き合いください。


タイガー
タイガー

それではスタートです!!

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川辺川ってどんな川?

熊本県南部、人吉盆地を流れる球磨川水系最大の支流が「川辺川」である。
川辺川は、2006年から16年連続で水質が最も良好な河川に選ばれており、その連続記録を現在も更新し続けている。

また、本流の球磨川は、日本三大急流の1つとしても数えられ、激流で有名。
(いつか必ず行きますからね!!)


川辺川そして球磨川は、野田知佑さんが愛した川でもある。
彼の著書にも度々登場するので、私はずっと憧れがあったのだ。

対談集「風になれ、波になれ」では、渡辺一枝さんと共に川辺川を下っている。


そして今回私が下るのは、多くのカヤッカーやカヌーイストに愛されてきたクラシックルート。

廻り観音の下、観音橋からスタートし、権現川原まで。
川辺川の清らかな水と激しい流れを満喫できる約10kmのコース。

事前にある程度インターネットで情報を集めていたのだが、それらは全て10年近く前のもの。
実際に下ってみると、若干様子が違っていた。
先の豪雨で、川のかたちも多少なりとも変わったのかもしれない。

流れの激しい瀬はいくつかあるものの、それらはほとんど問題ないレベル。
唯一の危険ポイントは、永江橋の手前の瀬。
右岸にコンクリートブロックが並び始めたら注意。
一旦スカウティングするのを強くオススメします。


ゴールは権現川原。柳瀬橋の下流の広々とした川原。
岸に上がると「柳瀬構造改善センター」という公民館のような建物があり、トイレと水道をお借りすることができる。
少し歩けばコンビニもある。


廻り観音 ⇒ 権現川原

巡りのバス停。
始発の高速バスで福岡から人吉へ。
それからローカルのバスに乗り換えて、9時45分到着。
近いものである。


廻(めぐ)り観音。


そして、河童の墓。
川辺川には古くから河童が棲むと言われているそう。

戦後そして高度成長期、人間の領域はどんどんと拡がり、妖怪たちは奥へ奥へと追いやられてしまった。
人間と妖怪たちとの境界線は今どこらへんにあるのだろう。

今後、こういった山里にはまた妖怪たちも帰ってくるのではなかろうか、という気がしてならない。
つまり、自然の割合が増えるということだが、それは一方で人間界で言うところの過疎を意味する。
なかなか寂しい側面もあるのだ。


観音橋から眺める川辺川。
美しいブルー。


10時30分 観音橋の下よりスタート。


水の美しさは言わずもがな。
川底との距離の感覚が狂う。


清流川辺川は、体長30cmを超える「尺アユ」が棲む川でもある。
ザーッという瀬の音が聴こえてきたら、だいたいその付近には鮎釣り師さんが立っている。

釣り師さんの数は、これまで下った川の中でも一番多かった。


そして、私が横を通過しようというタイミングで、見事に釣り上げた方が。
「おお〜!!」っと歓声を上げたのは私だけで、周囲の釣り師さんは見ているような見ていないような、だいぶクールな反応であった。


キラッキラの鮎。
美しい。

何人かの釣り師さんとお話をさせてもらったが、皆さん口を揃えて仰っていたのが「もし釣れなかったとしても、川辺川でこうやって竿を振っているだけで気持ちが良い」ということ。
地元の方、熊本市内の方、宮崎方面の方。


皆さん川辺川が大好きなんだナア。


そして、ここが最大の難所。
1mほど落ち込み、その下は激しい流れと引き込みで渦を巻いている。
水流のど真ん中を狙えば大丈夫。たぶん。

私は「まあなんとかなるだろう」と、スカウティングもせずそのまま突っ込み、バウが右に流れてしまい、引き込みに捕まり沈。
船体はあっけなくひっくり返り、しばらく流された。
「あ〜れ〜〜〜」


ここを狙うべし。ど真ん中。
…って、こうやって眺めればよく分かるんですけどね。



はい、
ここでアクシデント。

右岸に船を付け、再度瀬にチャレンジしようと思った私。
なんならスマホで動画を回しておこうと思った私。

三脚にスマホをセットし、動画撮影ボタンをポチっと。
「よーし、行くかあ!」と、瀬に向かおうとしたその時…

ひゅう〜〜〜

風が吹いた。




そして、

スマホをセットした三脚は、

そのまま川へ落ちていった。


「…ええ〜〜〜!!」

思わず声が出たが、すぐに川に飛び込みスマホの救出に向かう。

しかし!
瀬のまわりは激しい引き込み。
すぐに激流に飲まれ、私はまたしばらく流された。
「あ〜れ〜〜〜」


えーっと、今何が起きた…?


こういうことである。
水の流れが激しければ激しいほど、引き込みのパワーも圧倒的。
瀬のまわりは立っていられないほどの逆流が発生しており、ちょっと近づこうもんならすぐに飲み込まれちゃうっていう仕組み。



ほう。
これが「瀬」か。
(今さら何を言ってるん?笑)



もう一度、今度は慎重にチャレンジ。
遠くからちょっとずつ近づいていく。
水中メガネを持参していたので、川底を眺めながら。

すると、スマホを発見。
川底まで綺麗に見渡せるもんだから、さすがの川辺川です。


このあたりよ。
岩の下のえぐれているところ。

足が届くか届かないかギリギリ。
水深はおそらく2mか、せいぜい2.5m程度。

よし、救出だ!
と思ったが、私はライフジャケットを着用している。
つまり、身体は浮かんでいて、潜ることができない!

なんだ〜そういうことか〜っと、ライフジャケットを脱いでチャレンジ…


…あれ?
これ脱いでいいんだっけ?


激しい引き込みの中、左手で岸の岩を掴んでやっとこさ立っていられる状態。

ライフジャケットを着ているから、激流の中もプカプカと流されていけたけど、もし着ていなかったら人間はどうなるんだろうか?
それこそ、河童がヒョイっと足を引っ張ったりしないだろうか。


ふむ。
ライフジャケットは脱がない方向で、考えてみよう。


その後、パドルを使ってみたり、スリングで自身を確保してみたり、試行錯誤を繰り返し色々とチャレンジしてみたが、あえなく失敗。
1時間近く格闘する中で、5回ほど激流に飲み込まれ流される。
右足と左足のふくらはぎが一回ずつ攣る。
そして、長いこと水の中にいたので、岸に上がった時には身体の震えが止まらず、低体温症の一歩手前。


これは、そろそろ限界だな。
次がラストチャンス。
やはり、ライフジャケットを脱いで、潜るしかないだろう。

いけるか…?
ヤバイか…?


いけるか…?

ヤバイか…?



いけるか…?


ヤバイか…?




ここで、
何故だか分からんが、ラヴィット(内縁の妻)の顔が浮かんだ。
そして、彼女が度々口にしている言葉を思い出した。


ラヴィット
ラヴィット

一人で遊びに行くのは構わんけど、絶対に無理はしないように!!


ふむ。
これは諦めろ、ということだ。
私は決心した。

スマホはすぐそこ。
目に見えるところにあるが、私は諦める。
これは本当に勇気が要りますよ。


勇気ある撤退。
そういうことにしておこう。

ふう…
大撃沈。
からの意気消沈である。
(だから何を言ってるん?)



気を取り直して出発。
川辺川はかくも美しいのである。


堺田橋の下は、川ガキたちの溜まり場。
元気に川へ飛び込む姿を見せてくれる。

これは素晴らしい夏の風景である。


そして、13時50分。
広々とした権現川原に到着。


時間が早いので、もうちょっと先に進んでも良いかもしれんと思ったが、スマホがないので位置情報はもちろんのこと、近隣の情報収集なんかもできないのだ。
当初予定していた、ここをキャンプ地とする!
…しかない。


赤い吊橋が目印ということだったが、先の豪雨で流されてしまっていた。


川辺川流域〜人吉市内を歩く

早々とテント設営。


そしてしばらく横になる。
おじさんはねえ、だいぶ疲れちゃったよ。


ちょっと酒屋(ファミリーマート)に買い出しに行くか。
場所はリサーチ済み。
だいたい頭に入っている。


権現川原の上。
柳瀬構造改善センター。


そして、良い感じの食堂を発見。
せっかくなので、寄ってみる。


「こんにちは〜」

そう言って、店内を眺めると、お客さんはいない。
おばあがひとり座っていた。

「ごめんね〜今日は終わったよ〜」

あら、残念。
そういうことなら仕方がないので、諦めて店を出ようとすると、

「おにぎりくらいなら出せるけど、食べていくね?」

ええー!
そういうことならば、遠慮なくいただきます。

「握るけ、そこで竹輪か蒲鉾ば買って来んね」

私は、言われた通りにファミリーマートで、竹輪を買ってくる。


いや〜有難い。
気持ちが嬉しい。

清流川辺川の水で育った十島米。
とても美味しい。


私が川辺川を船で下ってきたことを伝えると、とても喜んでくれた。

そして色々とお話を聴かせてくれた。

昭和52年に、ここ相良の集落に嫁に来たこと、
そして昭和60年にご主人に先立たれ、必死でお店を続けてきたこと。
今現在お店を手伝ってくれている娘さんのこと。
川辺川のこと、それから川辺川ダムのこと。



「また川辺川ダムをつくろうという話になっとるでしょう。賛成の人ばかりじゃなくてね、反対する人も多いとよ」


一度は建設中止となった川辺川ダムだが、令和2年7月豪雨を受け、国と熊本県は再度建設の方向へ舵を切ったのである。
環境への影響を考慮し、治水のみを目的とした流水型ダムの建設を計画しているそうだが、とは言え、この美しい川辺川が美しいままであれるのか。



「わたしはずっと川辺川を見てきたからね、ダムはいややねえ…」


ダム建設反対!
というような強い言葉ではなかったが、しかし強い想いを私は感じた。


徳益食堂さん。

また行きます。
どうかお元気で。


柳瀬橋から見る川辺川。


権現川原のまわりには、たくさんの人が何かをしていたり、何もしていなかったり。
キャンプ地に戻り、酒を飲み寝る。




2日目。
早寝の私は早起きである。
人吉市内へのバスの時間までしばらくあったので、さがらの湯「茶湯里」まで約1時間かけて歩く。

【公式】さがら温泉「茶湯里」


こんなところにも河童が。

もうイタズラせんでくださいよ。
お願いですから。


ゆっくり湯に浸かり、人間らしさを取り戻す。


そして人吉市内へとバスで移動。

人吉・球磨の復興のランドマーク的なスポット。

HASSENBA -HITOYOSHI KUMAGAWA-

令和2年7月豪雨で壊滅的な被害を受けた人吉・球磨エリア。

球磨川流域で暮らす方々は、みんなで力を合わせ復興に向けて頑張っている。
球磨川の氾濫によって人々の生活は破壊されたが、復興の中心にあるのもまた球磨川なのだ。


人吉・球磨の観光マップを眺めていると、私は思わず胸が熱くなった。

私は紙のやつを見ていたが、デジタル版もあるようです。

人吉・球磨デジタルMAP


球磨川での川下りも、まだまだ限定的ではあるが、少しずつ再開しているようである。


人吉駅へ。
肥薩線は運休となっている。

駅前のラーメン屋に立ち寄る。


店主の永田さん。
川辺川を船で下ってきたことを話すと、やはりものすごく喜んでくれた。
本当に皆さん、川が大好きなのだ。


「しかしね、川辺川も次来るときは今回のようにはいかんかもしれんよ」

川辺川ダム建設について色々と思うところがあるようで、たくさんの話を聴かせてくれた。

そして、
球磨川もいつか船で下りたい、
肥薩線が開通したら必ずまた来たい、
そう私の思いを伝えると、

「肥薩線はねえ、10年はかかるかもしれんねえ」

橋はふたつ丸ごと流されたし、線路も土台から全て作り直さないといけないだろう、とのこと。


そうか。
復興はまだまだ道半ば。
問題は山積みなのである。


再会を約束し、店を出た。
どうかお元気で。


旅は続く…

川辺川を下り、流域を歩き、そして球磨川を眺めた。
2日間の短い滞在だったが、私はこのエリアが大好きになってしまった。


川辺川ダムについても、人吉・球磨の復興や治水対策についても、もう私にとって他人事ではなくなった。
今後も注視し続けます。


川辺川もまた下らなければならん。
沈した瀬にリベンジしたい。
(結局、今回は再チャレンジはしなかった)
同じようにまた弾き飛ばされても、それはそれで良いと思っている。

そして球磨川も。
良きタイミングで。
必ず。


お盆が過ぎ、季節が移り変わる時期。
山から川そして我々が暮らす街へと、少しずつ秋が下りてきます。


まだまだ残暑キビシイですが、私の2022年夏のパックラフト旅は一旦区切り。
気持ち的にね。


秋に向けて、また計画立てますか。


タイガー
タイガー

それではまた次回!!


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